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第222号 2008.10.25
機関紙222号
- 患者さんの生きる場を奪う政治に審判を
- "ながの看護集会"成功で看護改善大運動に大きな一歩
- 『新版 明日をひらく社会保障̶医療・社会保障の拡充をめざして』の学習がすすんでいます
- ほのぼの看護日誌
- いのちを大切にする国へ
- 東南西北
患者さんの生きる場を奪う政治に審判を!
塩尻協立病院の療養病棟の実態から
06年、当時の小泉内閣は、年間2200億円の削減のために国会で医療関連法を決めました。後期高齢者医療制度、特定健診、療養病床削減が主な内容です。そのどれもが国民から歓迎されず、後期高齢者医療制度は、廃止まであと一歩と追い込んでいます。療養病床削減も、いかに矛盾に満ちたものか塩尻協立病院の事例から明らかです。国民の審判を下す総選挙もまじか。医療・介護の再生に確かな1票を!
塩尻協立病院の療養病床は57床。そのうち8床は介護保険適用のショートステイ用です。
現在の入院、入所患者さんは、経管栄養22人(経鼻カテーテル5人、胃ろう15人、食道ろう2人)、気管切開4人、バルンカテーテル挿入5人、吸引、透析、その他点滴や持続皮下注射の必要な患者さんです。
転倒、転落の危険が高く、見守りが必要な認知症患者さんも多く、昼夜を問わず、詰め所内は車椅子で過ごす方に占領され、職員はその間を縫うように移動しています。
8床のショートステイは、医療依存度が高く、他の医療施設で断られたり、病状の変化で介護度が増した方、経管栄養はもちろん、最近は*寒天注入の方の受け入れは当院だけということで、その利用者が増加しつつあります。
経口摂取ができても、摂取量が少なくなるなどで食事介助を要する方も多く見られます。
ターミナル状態で病棟に来た患者さんが、時間をかけて全身状態をみながら、体位や食事形態を工夫した結果、少しずつ摂取量が増え、体力もついて自分の力で食事が摂取できるまでに回復、在宅に戻れたケースもあります。
しかし、療養病棟から宅へ帰るケースは、年に数件。施設へ申込みをしても満員だったり、そもそも医療依存度が高く受け入れてもらえない。在宅に戻ったとしても、家族の介護負担を軽減させるためのショートステイの受け入れもむずかしい。ずっと在宅で介護しようにも、訪問看護やヘルパーの利用にも限界がある。選択肢がない中、家族の介護疲れなどさらなる問題が発生します。このような状況におかれた方たちに、療養病棟がなくなった場合、いったいどこへ行けというのでしょうか。
病気も必要な処置も多種多様な状況にある患者さんを広く受け入れ、対応してきた療養病棟の役割は大きく、現在入院している方たちは、療養病棟でしか受け入れられない患者さんたちです。療養病棟削減は、まったく実態に見合ったものではありません。
情勢の変化に不安を抱きながらも、人生の大先輩である患者さんやご家族との関わりを通じて得るものを大切に、今できる最善の努力をしていかなければと思っています。
* 寒天注入…消化管症状(逆流や下痢など)がある人の経管栄養剤に寒天を混ぜ、半固形化したものを経管から注入すること。
国と厚生労働省の方針で高齢者が安心して長期に療養ができる療養病床が減らされています。今日は、その問題の背景や、病院への具体的な影響を塩尻協立病院(療養57床 一般(障害者施設病棟)42床)事務長の細川泰啓さんにお聞きしします。
ズバリお聞きしますが、“療養病床を減らす”ことの政府・厚生労働省の一番の狙いをどのように考えていますか?
細川 おっ、いきなり核心にふれてきましたね。
今年の6月27日、当時の福田総理は閣議で「経財政改革の基本方針(骨太の方針)2008」を決定しました。歳出に関しては「骨太の方針2006(小泉内閣当時)」を引継ぎ「最大限の削減を行う」との従来方針を堅持し、社会保障関係費の伸びを年2200億円圧縮するという目標を改めて確認をしています。
実はその2006年に打ち出された骨太の方針の中にある医療構造「改革」で、当時38万床ある全国の療養病床を2012年には介護療養病床を廃止し、医療療養病床を15万床に削減するとしています。
この案は医療費適正化計画という名称でうち出され、この療養病床削減計画は、将来的には、日本の人口の高齢化によって増大する医療費の抑制を目的にしていることはあきらかです。
療養病床削減の根っこは高齢者の医療費削減が目的なんですね。では、病院から療養病床を減少させるため、政府、厚生労働省は具体的にはどのような方策をしてきているのでしょう?
細川 一番効果的なやりかたは何だと思います?もうすでに06年から行われていますが、療養病床にかかる診療報酬という、医療保険から入る病院の収入を低額にすることです。病院をいわば“兵糧攻め”にし、経営的にやっていけなくして、仕方なく病床の返上をせざるをえなくしていくというやり方です。
私も病院の医事課職員ですが、06年の改定にはびっくりしました。制度の内容も含めて、こんなに大きく変わっていいのかとても不安になったことを覚えています。
細川 療養病床の診療報酬に関わる問題点は、大きくわけて2点あると思います。
1点目の大きな問題(変更点)は、従来から包括され、ただでさえ低めに設定されていた療養病棟の入院料が、患者さんの医療に関わる状態で5段階に評価され、決まっていくやり方に変更されたことです。
医療依存が一番低い患者さんの入院料の設定は、1日7500円程度という状況です。あとでも述べますが、加算等を含めると約半分ぐらいに診療報酬が減額されました。
その影響で、いわゆる“医療区分”が低い患者さんの割合が多いと、診療報酬による収入が今までと比べて大幅に減少するため、経営的にかなり厳しくなります。そのため、“医療区分1”といわれる評価対象となる患者さんも入院しづらくなる状況となり、その結果“追い出し”が行われ“療養難民”という言葉も生まれました。
2点目の問題点は、“特殊疾患入院施設管理加算”の廃止です。療養病棟に入院している患者さん1人で1日3500円の請求ができていましたが、この加算が06年の改定で外されてしまいました。このことが、経営的には大きな打撃となっています。
この加算は脳梗塞の後遺症などにより自力で歩行できない患者さんをはじめ、障害を持っている患者さん、難病患者さんが病棟に常時7割以上入院されていればその病棟全員に算定ができるという内容です。当院はもちろん、全国の民医連病院のほとんどの療養病床で算定できた加算でした。個人的には、この改訂の方が厚生労働省のねらいではないか思います。
そういえば塩尻協立病院の一般病棟のほうは障害者施設等病棟で、その特殊疾患入院施設管理加算は今まで算定できていましたが、この10月から基準が変更されたんですよね(脳梗塞後遺症等は対象除外され難病・意識障害等患者で7割以上の入院患者がその病棟で必要)。
細川 そうなんです。塩尻協立病院ではこの間、一般病棟として、その入院料と加算を診療報酬請求していましたが、今回、その基準が変わったことにより、患者さんの状態でその基準をクリアすることができなくなりました。それにより、いわゆる“普通”の一般病棟への変更しか道はなく、そのことにより加算の請求ができなくなりました。
その経営的な影響は、この加算部分だけでも06年改定以前とくらべて年間1億円をはるかに超える収入減となり、その額は当院の年間収入の約1割にもあたります。その経営的な影響は“ハンパない”ぐらいの大きなダメージです。
たしかに、すごい減収です。療養病床だけにかかわらず、後期高齢者医療制度の問題もあるし、今後の日本の高齢者の医療はどうなっていくんでしょう?経営面をふくめても制度としても成り立っていくのかとても心配です。
細川 この経営的な収入減の“源”は、政府・厚生労働省がおしすすめる高齢者の医療費削減計画の一端であり、その計画はまだはじまったばかりです。
地域で高齢者医療を担う中小規模の病院はまさに瀕死の状態で、全国的にも病床閉鎖、または病院閉鎖の道を選択するしかない病院がでてきています。「民医連の医療・介護制度の再生プラン」で示されている医療・社会保障削減方針の抜本的な転換を要求し、「医療崩壊」を食い止める運動しか生き延びる道はないと考えます。がんばりましょう!
療養病床は、病状が安定してきて、高度な医療の必要性はないが、常時医学的管理を要する患者が入院する病棟です。実際には他の医療機関の急性期病棟の短期間の治療では十分に回復できない高齢者の、その後の治療を療養病床が担っています。救急・救命・急性期病院からも「治療の継続ができる病床」として受け入れ実績もあり期待もされています。
療養病床は医療区分とADL(生活自立度)区分・65歳以上か未満かによって、診療報酬が異なります。(表)
医療区分1の人は「社会的入院」とみなされ、点数が低いばかりか、食費(材料費+調理コスト)1食460円と居住費(水光熱費)1日320円が徴収される仕組みになっています。
この費用はこれまで70歳以上が対象でしたが、08年4月からは65歳以上となり、負担対象が増えました。
医療区分が同じ1でも見守りが必要な認知症の人や、(医療区分2に満たない頻度ではあるが)喀痰吸引などの医療処置が必要な人まで、さまざまな病態の人がいます。それを同じ診療報酬に当てはめることは実態に合いません。また、診療報酬は「包括」の部分もあり、一つひとつの検査や投薬が点数化されるわけではないので、実際にかかる経費をまかなえません。(詳しくはこちら)
厚生労働省は、「療養病床」=「社会的入院」とひとくくりにし、「ここを減らせば医療費が減る」としていますが、療養病床でしかみられない人の医療を提供している、かけがえのない病床なのです。
9月27日、「ながの看護集会」が、50人の参加で行われました。
午前中の集会では、全日本民医連の窪倉みさ江副会長の講演と介護を含めた7人のリレートークがありました。窪倉副会長は、看護改善大運動の今後の視点と方向性を提案。新卒確保問題に触れ、締めくくりで「医療を守ることと自分達の生活は、切ないくらい矛盾している。そうであるならば、一人一人が毎日の仕事で、患者と向き合い、そこからやりがいを感じ、自己実現を」と語り、参加者の共感を呼びました。
そのまま午後は、ベビーを抱いたママナースも含め、松本駅に繰り出しました。元気いっぱい声を出し、1時間で425筆の署名を集め、一気に県連目標の2万筆を達成することができました。
さらに成果が続きます。「看護師問題で共同の輪を広げよう」と、10月2日、長野県看護協会との懇談が実現しました。
そこでは、「看護師不足」の実態や確保の困難さを共有できました。そして、なんと「署名に協力しますよ!」の返事ももらうことができたのです。
今後、看護職の仲間に看護署名を広げる、また、病院訪問を行い共同の輪を広げるなど、12月末までに大きく運動をすすめていきましょう。(県連看介護部長・牛山智代美)
社保テキストの学習運動がさまざまな工夫ですすんでいます。
月~金曜日の昼休みに1週間同じ講座を開いて参加機会を増やしている塩尻協立病院、参加確認カードを全職員に配布し、昼夜2部構成で学習会を開いている長野中央病院。朝会や職場会で読みあっている事業所もあります。
社会保障が勝ち取られてきた歴史や現在の格差社会を読み解くカギがテキストにはつまっています。
「第4章」の講師を行いました。講師を務めるにあたり、自分なりに勉強し内容をまとめました。講座には多くの職員が参加し、「北欧のような社会保障制度が実現できるといいな」との意見が多く聞かれました。しかし、相手に自分の伝えたいことを伝えるということの難しさを実感しました。
私たちが病院で行っているさまざまな闘いの大切さを改めて知ることができました。現在の国の政策は、国民の方を向いていないように感じます。患者さんや私たちが安心して暮らせる世の中にするにはどうすれば良いのか、深く考えさせられる学習会でした。
病棟の誕生会は毎月1回、誕生月の患者さん全員が主役です。調理科スタッフが腕をふるってくれたホールケーキを持って患者さん達を訪ね、ハッピーバースデーを歌います。
ご本人にはもちろんナイショ。ご家族の協力が得られる場合は、その時間に面会に来ていただき、一緒にお祝いします。どの患者さんもこのサプライズにはビックリ。でも、にっこりしてスタッフと記念写真を撮ります。ケーキは1つなので、人数が多いと大変!全員の写真撮影終了後に切り分けます。
プレゼントの寄せ書きは、患者さんのプライマリーナースが中心になり準備します。担当チームの看護師のほか、主治医やリハスタッフ、MSWなど、患者さんとともに病気と闘っているスタッフならではのメッセージがつづられます。
入院で、つらい時を過ごしている患者さんが少しでも元気になれるようにと、忙しい合間をぬって続けてこれたのは、調理科の全面協力と病棟スタッフの熱意があってこそ。でも、患者さんやご家族の笑顔から元気をもらっているのは、実は私達なのかもしれません。(看護師長・佐野 瑞穂)
信州大学医学部4年 村山 恒峻
入学した春に「救急車同乗体験」や「当直体験」に参加して民医連を知りました。そして、患者さんと地域を中心に考える民医連医療に感銘を受け、1年生の冬から奨学生となりました。
昨今、「医療崩壊」が社会的な問題となっており、テレビや新聞で毎日のように報道されるようになってきました。中でも医師不足はそれを象徴するような大きな課題となっています。県内でも産科医不足で産科の閉鎖・集約化が進んでいる地域があるなど、医師不足の影響は確実に広がっています。医師が最も充足しているはずの東京や京都などでさえ、先進諸国の平均にすら満たないというのが実情です。
この事実がようやく広く認知されるようになり、「日本の医師数は絶対的に不足している」と主張する個人・団体が次々と現れています。
私は、今こそ医師・医学生が連帯し、医師不足の実態を正しく訴えていくことが必要であると考え、『地域医療の再生を求める 医師・医学生の請願署名』の呼びかけ人に名を連ねました。全国の医学部自治会の連合体である全日本医学生自治会連合でも各地の大学に呼びかけ、この運動を広げつつあります。
多くの医学生は、まだ医師として現場にいないので、医師不足の実感がないと思います。「医師を増やす財源がどこにあるのか」「医学部も定員だけ増えても大学への予算が増えないとなんともならないのではないか」など、さまざまな意見を聞きます。しかし、現場で医師が足りなくなっているのはまぎれもない事実です。これから大学でクラスに入って、『医師・医学生の請願署名』を訴えるのですが、そのことをきちんと伝えたいと思っています。
私たちが取り組んでいる署名は、「医療崩壊」を食い止め「医療再生」へと踏み出すための第一歩です。民医連の掲げる「いつでも、どこでも、だれもが安心できるよい医療と福祉をめざして」は、まさに患者さんの求める医療と福祉です。それに少しでも近づくためにも、この一歩が大きな躍進になるように活動を盛り上げていきたいと思います。
飯伊
雰囲気満点!紙芝居木枠できました
『医療・介護「崩壊」から「再生」へ』の紙芝居はご存知ですね?健和会病院施設担当職員の飯島昇示さんが、この紙芝居に合わせて専用の「木枠」を作成しました。「インターネットで調べて見よう見まねで作ってみました。また頼まれればね」とにっこり。友の会班会などに持って行き、運動に活用する予定です。長野
リニューアルにお神楽も
9月27日、南長池診療所の地元、長池神社の秋祭が行われました。11月から始まるリニューアルの成功と工事の安全を願って、診療所でお神楽を舞っていただきました。組合員、職員も大勢集まり、飲んで騒いで、お神楽よりもにぎやかな夜の診療所でした。東信
今年も外国人健診
10月12日、上田生協診療所で「2008外国人健診」が取り組まれました。1日に1つの会場で検査と診察(内科・歯科)が受けられる健診は北信外国人医療ネットワークが企画、10~11月に県下5会場で開かれます。受診者はブラジル籍の人など25人。6か国語の通訳を含め50人のボランティアが活躍しました。上伊那
ジャズの生演奏で優雅なひと時
9月20日、伊那市のかんてんパパガーデンで、「JAZZの夕べinひまわり亭」と題し、共済組合主催の職員リフレッシュ企画を行いました。信州大学ジャズ研究会の生演奏と洋風アレンジの創作寒天料理のディナーを楽しもうという内容で、40名を超える参加者で優雅なひと時をすごしました。