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長野県民主医療機関連合会

アクセスマップ

〒390-0803
長野県松本市元町2-9-11
民医連会館2F
TEL.0263-36-1390
FAX.0263-33-1229

機関紙:長野県民医連

第235号 2010.01.01

患者さんの胸のうちを聞ける医者になりたい

長野県民主医療機関連合会2010年1月1日 第235号

長野県民医連は、1980年から「次代を担う医師を自前で育てよう」と、医師集団が先頭に立って積極的に研修医を受け入れてきました。09年4月からは、阿部光俊医師と河合俊輔医師が長野中央病院で初期研修をはじめています。2人の研修医と、研修を見守っている研修プログラム責任者の番場誉医師に研修について聞きました。

“医師力”を磨く

研修プログラム責任者の番場医師と
研修プログラム責任者の番場医師と

阿部医師は民医連奨学生としてすごした経験から、河合医師は大阪で行われたレジナビ(医学生の就職ガイダンス)で長野中央病院を初期研修先に選びました。
「どこで勉強したいか真剣に考え、患者さん一人ひとりを大切にする医療機関だということを評価してくれたことに感謝しています。良い研修をして、若い医師たちの力になりたい」と番場医師は語ります。
初期研修は2年間。臨床研修制度で内科・救急部門・地域医療・外科・産婦人科・小児科・精神科の7科を学ぶことが義務づけられています。1~3か月のスパンで各科をローテーションし、シニアレジデントとよばれる3~5年目の医師を指導医に、実際に2~6人の患者さんを受け持って行われます。
番場医師は、この受け持ち制により、主治医としての意識が持てる研修をめざしていると言います。
「指導医の患者さんをみせてもらう実習的なところも多いようですが、『人』を学んでほしい。指導医もサポートしますが、自分の決断や行動が方針となり、患者さんを治していく、あるいは寄り添っていくことで医師としての力がついていくのです。患者さんを受け持つことで『主治医機能の役割』を身に付けることもねらいです。高度に専門分化した医療を提供する病院も多いですが、総合性と専門性を兼ね備えた統合医療の大切さを学んでほしいと思います」
30年におよぶ研修医受け入れの経験に裏打ちされた受け持ち制へのこだわりが、医師力を磨いていきます。
患者さんにとって、研修医はいちばん身近な医師です。さまざまな願いにこたえようと、一生懸命な姿が浮かびます。
土曜日、ICUに入院中の患者さんの家族と話す阿部医師の姿がありました。「土日は基本的に休みですが、どうも気になって病院に来てしまいます」
河合医師は、09年原水禁世界大会に代表で参加しましたが、はじめは「3日も病院を留守にして、患者さんになにかあったらどうしよう」と、悩んだそうです。
番場医師のもとには、「研修医が、よく患者さんを訪ねてくれて安心します」という看護師をはじめとする病棟スタッフの声が届いています。「彼らは、医者は人とのつきあいの仕事だということをよくわかっているのだと思います」とにっこり。
自分の性格を阿部医師は「のんびり屋で楽観的」といい、アスリートの河合医師は「静かにねらっているタイプ」と分析。―共通しているのは患者さんへの謙虚なまなざしです。

患者さんの涙にはわけがある

これまでの研修の中で、心に強く残った患者さんのことを聞きました。
阿部医師は、麻酔科で出会った女性の患者さんです。
「手術の前の晩に病室で麻酔の説明をしていたら、急に泣き出してしまったんです」説明を一旦止めて話を聞くと、以前に行った手術の後に大変な思いをした、今度もそうなったらと思うと怖い、という涙でした。落ち着いたところでもう一度話し、手術当日も「ずっとそばに付いてますからね」と励ましました。
無事に手術が終わり術前室に戻った患者さんが、阿部医師が近くにいるのを知らず、看護師さんに「昨日先生に話を聞いてもらったから、やすらいだ気持ちで手術が受けられました」と話しているのを聞き、胸がいっぱいになったそうです。
河合医師は、これまで高齢の患者さんを6人看取りました。
はじめて看取ったのは、2人目の受け持ち患者さんでした。「治癒の望めない白血病で、家族から告知はしないでくれと言われました。ご本人は治るために入院していると思っているので、良くならない病状にいらだって検査を拒否したり、急に泣かれたり。あれは辛かったです」
「医者と話したい」と毎日訴える患者さんの話を1時間以上も聞きました。「泣いたり怒ったりのわけに踏み込んでいかなければならないときもあります。それを聞くことで、また次の患者さんに生かせることがあります」河合医師は静かに語ります。

追いかけたい背中

病棟カンファレンスでの阿部医師
病棟カンファレンスでの阿部医師

「一人前の医師になるために必要なことは『See one. Do one. Teach one.』(見てみる、やってみる、教えてみる)。そのなかで何より大切なのは『教えてみる』です」と番場医師は言います。「研修医に教えることで、シニアレジデントが一人立ちの医師に育ち、ベテランの医師はレベルを維持できます。研修医は、病院にとってなくてはならない存在です」
そんな指導医の姿は、研修医にどう映っているのでしょうか。
「患者さんの訴えに、たとえ専門外のことでも一生懸命勉強して答えている姿に、医者としての背中を見せてもらっています。追いかけたい背中です」と阿部医師。めざすのは「専門性を持つことはもちろん、いろいろな知識を備えたスペシャリスト、ジェネラリストな医師」です。
「指導医の先生は、患者さんに会ったとたんに、これはだいじょうぶとか、心配だとかの診断がなんとなくついているんです。それが検査などによって裏打ちされたとき、自分の未熟さを感じます。日々の診断の積み重ねで自分もいつかそうなりたいです」と河合医師。「総合診療のできる医師、同時に循環器のスペシャリストをめざします」と力強く語ってくれました。
「医者は一生学び続ける職業」という番場医師の言葉が実感できます。

研修医は「未来」

病棟カンファレンスでの阿部医師
09年原水禁世界大会で長崎を訪れた河合医師(左から2人目)

研修医は毎日が勉強です。大変なこともたくさんありますが、患者さんの回復がなによりの喜びです。「貧血がひどく、ご本人は血液の悪い病気ではないか、と落ち込んで受診をしてきた患者さんを診断したところ、ビタミン欠乏症と判明。薬でどんどんよくなり、見違えるように元気になられました。医者として診断し、治療して患者さんに喜ばれるのは、正直うれしい瞬間です」と河合医師。
また、阿部医師も「むずかしい手技である中心静脈栄養や気管挿管など、できることが多くなることも喜び」だと語ります。
「インターネット世代の医学生が、自分の望む医療ができる場所はないかと、レジナビなどに実際に足を運んでいることに驚きました。そこには、私たちの医療に共感してくれる学生がちゃんといる」と番場医師は、確信しています。


取材を通して、2人の研修医が病気にも真剣に立ち向かいながら、患者の目線に立つことやしっかり話を聞くことなど、人を診ることができる医師をめざしていることがわかり、感動しました。
熱い思いで医療の現場に立つ医師たちの心が折れないような医療を、いっしょにつくっていきましょう。
(取材/檀原 弘幸 小山 秀樹)

病棟カンファレンスでの阿部医師
医 師 紹 介
阿部光俊医師(左)
山梨県出身・信州大学卒
趣味は料理で1日1個は納豆をアレンジして食べる。コーヒーはブラック!豆はマンデリン。同居人はコモンマーモセットのもん吉クン。部屋に帰ったときやお風呂に入ったときのかわいい仕草にまいっています。
河合俊輔医師(右)
福岡県出身・京都府立医大卒
5歳からスケートをはじめ、ショートトラック競技を大学卒業まで続ける。小学生で全国優勝、高校で2位、大学時代もオリンピック予選にエントリーするほどのアスリート。家に帰ってからの日課は腹筋です。

綱領の心をつなぐ 民医連でよかった!

2010年2月、第39回全日本民医連総会で新しい綱領が決定する予定です。09年には事業所や職場で、民医連の歴史に学びながら現在の綱領・綱領草案・綱領改定案を討論しました。「無差別・平等の医療と福祉」「すべての人が人として尊重される社会」…新しい綱領とともに引き継がれる「民医連でよかった!」を寄せてもらいました。

スタッフに育てられる医師研修

健和会病院・小児科医師 和田 浩
健和会病院・小児科医師
和田 浩

20年ほど前、小児科研修の一環として松本協立病院にいた時のことです。外来にとびひの子がきました。比較的軽いのでゲンタシン軟膏だけ処方して帰そうとしたら、看護師さんがこういうのです。「この子の家は○○村なの。また来るのに電車に乗ってすごく時間がかかるんだから、内服の抗生剤も出してあげて」
私は「この程度で内服まで使わなくてもいい」と言って結局処方はしなかったのですが、その子がどうやって受診しているかなんてことを考えもしなかった自分に気づかされ「患者の立場に立つ」ってこういうことなんだと感じました。
民医連の研修の優れた点の一つは、こうして医師を育ててくれるスタッフがいることだと思います。
昨年、外来小児科学会や岐阜大学での医学教育ワークショップで、スタッフの行う研修医指導について報告しましたが、主に大学の医師から「うちの看護師にはとてもできない」という感想が聞かれました。私たちは優れたスタッフに支えられていることを大いに誇っていいのだと思います。

仲間がいるから私らしく働ける

松本協立病院・看護師  萩原 直子
松本協立病院・看護師
萩原 直子

就職した時には民医連を知らず、当時はとまどいがありました。「患者さんに優しい看護」、そんなことは当たり前…何故そこまで語るのかと不思議でしかたなく、反発もありました。
しかし、研修を受けたり、友の会員さんの話を聞いたりする中で、変わってきました。
「キュアからケア」―この時に看護の質が問われます。疼痛コントロールがどれだけ患者さんに負担をかけているか。楽になるにはどのくらいお金を費やすのか。抗癌剤は何回やったら大丈夫なのか。「お金がないからできません」という方々を多く看てきました。私たちは他職種と連携して一番良い方法を患者さん、家族と一緒に考えます。それができている病院、私たちが働いている民医連の良いところだと思います。

松本協立病院3東病棟のスタッフと
松本協立病院3東病棟のスタッフと

この病院で私らしくいられる事が「ここで働けてよかった」と思う理由です。この思いが持続しているのは、仲間がいるからです。『いつも いつも さりげない 思いやりを 感謝です』というはがきを仲間からプレゼントされました。これが私の心の支えです。辛いときそっと添えてくれる手紙は私の心にどんなにか響いてくるでしょうか。本当に感謝、感謝です。

利用者の気持ちがかなえられる介護

老健ふるさと・介護 高橋 元
老健ふるさと・介護
高橋 元

長野医療生協に入職して3年目になりました。さまざまな経験をしてきた中で、09年に出会い、心に残った利用者さんを紹介します。
Mさんは息子さんとの2人暮し。入院治療により病気は改善したが、廃用症候群のために病院から直接家に帰ることができませんでした。
しかし、本人も家族も在宅復帰を強く望んでいました。そこで老健に入所し、立ち上がり体操と歩行練習、排泄動作の練習などのリハビリに取り組んだ結果、念願だった自宅へ帰ることができました。
退所後数か月してお宅を訪問しましたが、「家へ戻れてほんとに良かった」と話す笑顔を見て、うれしくなりました。
気になる利用者さん訪問など、民医連の取り組みの大切さを実感する事ができた事例です。

利用者様の背景を知り、援助ができる気になる利用者様訪問

松本協立病院・看護師  萩原 直子
老健はびろの里
副総看護師長
増田 仁美

病院には「気になる患者様訪問」がありますが、老人保健施設でも地域に暮らす利用者さんの実態を知ろうと、“気に利訪問”を実施しています。
08年は10件の“気に利訪問”を行い、認知症のAさんのお宅で在宅介護の大変な実情を知り、ショートステイで在宅を支える重要性を感じました。
09年も“気に利訪問”を開始し、脳梗塞後遺症で入所されているBさんのお宅へうかがいました。

老健はびろの里にて
老健はびろの里にて

夜勤のある仕事をされている2人の息子さんが介護されているため「家で見てあげたいが、むずかしい」ということです。そのかわりにと連日のように面会に見え、また外泊や外出にも頻繁に取り組まれています。Bさんも息子さんの面会を頼りに入所されています。お宅でもいろいろな工夫をされており、参考になりました。
男性介護者のストレスによる自殺等が社会問題になる中、息子さんたちが精一杯の優しさで父親を支えている様子を知り、私たちも協力をしていこうと感じました。

620人に聞き取り無料低額診療事業はじめる

諏訪共立病院・MSW 福田香奈 山岸 舞
諏訪共立病院・MSW 
福田香奈(左) 山岸 舞(右)

私たちは2人とも医療ソーシャルワーカーとして09年4月から諏訪共立病院で働いています。
大学を卒業し、社会人として働く事に大きな希望と不安を抱きながら、病院の各部署での研修から始まりました。その後、「SOSネットワーク」への参加や「無料低額診療事業」を始めるための準備に携わり、これが私たちに任された大きな仕事となりました。
無料低額診療事業実施の準備として、1か月間で620人の外来患者さん一人ひとりから聞き取りを行いました。アンケートの内容は「性別・年齢・保険証の種類・住民税、所得税の有無・年金の種類」などです。
「こんにちは。私は相談室の者です」と声をかけると、お互い初対面にもかかわらず、アンケートの項目にはない、自身の抱えている心配事や困っていることなどを話していただきました。また病院に対する思いや私たちへの励ましの言葉もいただくなど、とても貴重な経験となりました。

待合室でのアンケート
待合室でのアンケート

無料低額診療は9月から開始しました。何人かの方が無料・低額の対象となり、今でも病院にかかっています。その中でも金銭に余裕がなく、身体の具合が悪くても我慢して生活している方がいることを知り、社会の厳しさを痛感しました。
私たちは「安心して病院にかかることができる」「患者さんの立場に立った医療を民医連は実践している」という事を肌で感じてきました。これからも民医連職員としての誇りを持ち、努力していきたいと思っています。

協同・連帯で社会に居場所を反貧困陽だまりネットに参加して

上田生協訪問看護ST・ケアマネジャー 石坂 誠
上田生協訪問看護ST
ケアマネジャー
石坂 誠

東信医療生協は、毎月1回の「反貧困陽だまりネット」の相談会に、相談員や健康チェックの担当として参加しています。3月から始まった相談会も、11月で9回目となりました。
私は、7回に相談員として参加していますが、回を追うごとに相談者は増え、08年の年越派遣村村長の湯浅誠さんの言う「滑り台社会」を実感しています。
相談に来るリピーターも増えています。仕事がみつからずに大変だと思う反面、陽だまりネットが、利用する方にとっては一つの居場所になっていること、「溜め」の一つになっていることを感じます。

反貧困陽だまりネット相談会
反貧困陽だまりネット相談会

雇用保険、生活保護、就業支援といったセーフティーネットの再構築を訴えていくことも重要ですが、私は、地域の方々との協同・連帯を掲げる医療生協として、自分の尊厳を守れなくなった人に対するケア(居場所作り、生活力・生活関係の形成、溜めの再構築等)も行っていかなければという思いが、参加するたびに強くなっています。
陽だまりネットでは、年末年始に向けて、12月25日の相談会・餅つき大会、12月30日~1月3日の「年末年始生活支援の家」(仮称)開設など、居場所づくりへの支援を強めます。私もできるかぎり参加し、居場所づくりの重要さを実感したいと思っています。

沖縄と連帯できる民医連の平和活動~辺野古支援で実感

塩尻協立病院・事務 森 芳恵
塩尻協立病院・事務
森 芳恵

09年1月、辺野古支援連帯行動に参加しました。基地見学や支援行動を行いましたが、参加をして特に印象的だったのは沖縄の人たちに「がんばってください」という声がけはしないでと事前に呼びかけられたことでした。

辺野古の海岸を分断する米軍の鉄条網に結ばれた、平和へのメッセージ
辺野古の海岸を分断する米軍の鉄条網に結ばれた、平和へのメッセージ

3日間の行動を通して全国から集まった職員とともに沖縄の問題を肌で感じて考えることができ、沖縄の米軍基地は決して沖縄だけの問題ではなく、日本全体で連帯して解決していかなければならないことだと強く思いました。
このように平和を創り出す取り組みができるのは、「いのちと健康を守る」ことと真剣に向き合っている民医連だからこそではないかと思います。辺野古の行動を通して、「がんばって」ではなく「一緒にがんばろう」という、その意味を実感しました。

後期高齢者医療制度即時廃止へこれからも共に歩もう!

長野医療生協・常務理事 礒野 博康
長野医療生協・常務理事
礒野 博康

08年4月にスタートした後期高齢者医療制度は、06年6月に「自・公政権」の強行採決で誕生しました。75歳以上の高齢者を「医療費食い」の世代として、一般の医療保険から追い出したものです。これに対し、中止・撤回から即時廃止へと、全国的な大運動が繰り広げられました。

09年の「不況打開、なくせ貧困、守ろう!いのちと暮らし11・8国民大集会in 代々木」にも医療生協組合員と職員が一緒に参加
09年の「不況打開、なくせ貧困、守ろう!いのちと暮らし11・8国民大集会in 代々木」にも医療生協組合員と職員が一緒に参加

なかでも、医療・介護の現場で働く民医連職員が、自らの問題ととらえ、署名・宣伝、「怒りの姨捨山一揆」などの集会、デモ行進などに発揮したパワーは、はかりしれません。民医連があってよかった…08年6月に参議院で可決した「廃止法案」は、まさに共同の成果といえます。
報道によると、新政権は新しい制度が出来るまで廃止を先送りする方針です。民医連職員と共同組織は、姨捨山で発揮した力を再び結集して即時廃止を実現させましょう。

新企画 あなたの職場にこんにちは 働いてよかったと思える職場をみんなの力でつくりたい

イラスト

今年から機関紙編集委員がみなさんの職場を訪ねて紹介する企画がはじまります。はじめての訪問先は上伊那生協病院師長室。病院立ち上げから、さまざまな困難に立ち向かい、いま元気いっぱいの看護集団に、その秘訣をうかがいました。新年号拡大バージョンでお届けします。

(取材・宗田まゆ美、小林千里、北村範子)


みなさん

前列右  北原由江教育担当師長
ズバリ!上伊那の元気の秘けつは?「話しやすいここの雰囲気。『ついて行こう!』と思える上司」
前列左  後藤純子さん
若い職員からたくさんのパワーをもらっています。病院のこれからを背負っていく頼もしい後輩です。
後列右  黒川照子介護部長
後列右から2人目  耳塚 操副総師長
こころがけているのはまず現場に行くこと。現場で、「大変よね」と大変さを共有すること。私の仕事はそれを周囲へ伝えることだと思います。
後列右から3人目  村田裕子看護部長(総師長兼務)
提案すると、何でもすぐ形にしてくれるスタッフがいるの。うれしいわ。
後列左  小林伸子さん

再就職支援講習、ワーキングママの会、病児保育などにトライ!

  誕生日には師長室からメッセージカードとプレゼントが
誕生日には師長室から
メッセージカードとプレゼントが

09年8月から、誕生日に「バースデイカード」を始めました。病院に働く看護介護職員約160人が対象です。フィッシュ哲学の「いいとこ探しカード」からヒントを得ました。カードに印刷された4つ葉のクローバーに、4人がメッセージを書きます。書き手は主任、師長、管理、時には医師も登場します。

「診療所時代は、どんなに看護師募集を出しても応募は少なかった。ここ数年、毎年4~5人の職員を迎えられ、とてもうれしい。『やっと来てもらった』という思いが強いので、大事にしたいと考えています」と村田看護部長。病児保育などの取り組みは、「職員が働き続けるためには何が必要か」が出発点です。

5分で終わったシーツ交換

 09年10月26日にオープンした病児保育室「いちごハウス」
09年10月26日にオープンした病児保育室「いちごハウス」

08年、一般病棟で人員不足の時期があり、シーツ交換にも長時間かかる状況でした。「何とかしよう」と師長会から職責会議に提案。曜日・時刻を決め「木曜日の13時からシーツ交換を行います」と、当日は朝会でもアナウンスしました。看護以外にも事務や技術の職場からも応援が入り、15分でシーツ交換が終わりました。この経験から「今度は、自分達が応援に…」となりました。

「師長会は2週に1回、2時間、時間内に行っています。2階~4階は一般病棟・回復期リハ病棟・療養病棟で、名前は同じ病棟師長でも悩みはそれぞれです。だけど、師長たちは『自分の職場だけたいへん』と考えずに、周囲の職場のことも考えられる良さがあるんです。お互い率直にものを言い、現状を出しあい相談できる関係なのが一番うれしいですね。」と北原師長。

「県連はひとつ」に感謝

 09年10月26日にオープンした病児保育室「いちごハウス」

病院化にあたっては、「県連はひとつ」の立場から、長野中央病院、松本協立病院、塩尻協立病院、諏訪共立病院、健和会病院から計7人の看護師が支援に入りました。
その看護師たちは「ここが自分の病院」であるかのように、職場の基礎づくりに力を注いでくれたそうです。一緒にプリセプター(新人看護師教育担当者)を体験したり、チームリーダー・サブリーダーとして働く中で病棟運営を学びました。07年には交換研修で、上伊那の職員も他病院で研修しました。
「自分のところでも看護師が少なくて病棟が開けられないほど大変なのに、『支援に出す』なんて民医連以外では考えられないことですよね」と耳塚副総師長は振り返ります。

「医者もいないのに、本当に病院なんてできるの?」という風評を乗り越えて病院化が実現しました。近隣病院でも医師退職が話題になり、毎年、社会保障関連予算が削減されるというきびしい医療情勢の中でした。
「病院化できたのは、県連のみなさんの応援があったからこそ」という感謝の声があちこちから聞かれます。「だからこそ、上伊那が『元気』でいなくては。それが、支援してくれた県連のみなさんへの恩返し。働いていてよかったと思える職場をみんなの力でつくりたい」―強い思いが伝わってきました。

ひと言コメント

沢崎富士子外来師長
外来の「総合案内」に毎日立てているわけではないが、気持はそこにある。業務に流されず、毎日を大事にしたい。

金子弥生2階(療養棟)師長
療養病棟は「まるめ」だが、患者さんはまるめられない。その中で頑張っているスタッフに「うちの病棟がどれくらい病院の赤字解消に貢献しているのか」を伝えている。

神戸基康看護師(4年目)
家に帰っても困らないように、「どうしたらいいか」を多職種で考える。リハビリが充実していて「在宅へつなげられる」。これが上伊那の「売り」です。


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