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長野県民主医療機関連合会

アクセスマップ

〒390-0803
長野県松本市元町2-9-11
民医連会館2F
TEL.0263-36-1390
FAX.0263-33-1229

機関紙:長野県民医連

第248号 2011.04.04

「東日本大震災」心ひとつに被災地を救おう

長野県連医療支援チーム

3月11日午後2時46分ごろ、宮城県牡鹿半島沖の海底を震源とするM9.0の巨大地震が起きました。直後に発生した大津波は、東北地方を中心に北海道から四国までの太平洋岸を襲い、甚大な被害をもたらしました。民医連の院所も流され、職員や家族、患者・利用者さんにも多くの犠牲者が出ています。長野県連はただちに医療支援チームを結成、13日夜には宮城県坂総合病院に到着して支援に全力をあげています。3月末までに60人を超える職員が現地に赴きます。現地からのメールをもとに状況をお知らせします。


今が、長野県民医連の組織と全職員の力・共同組織の力を発揮するとき

2011年3月19日 長野県民医連会長 熊谷 嘉隆

想像を超える地震と津波被害の全貌が徐々に明らかになりつつあります。どの報道も心を痛めるものばかりです。民医連職員の誰もがテレビに映りだされる画面の向こうに直ぐにでも出かけ、手を差し伸べたい気持ちに駆られているのではないでしょうか。しかし、誰もがその手段を持ち合わせているわけではありません。
綱領の「いのちの平等を掲げ、地域住民の切実な要求に応える医療を実践」するため、全日本民医連と全ての県連院所は、地震直後から組織・法人・事業所を上げて支援を始めました。長野県民医連の各連絡会から、連日のように医療チーム・物資の支援を送りだしています。
地域の人々も、行政や各団体より民医連の事業所のほうが早く現地に支援物資を届けてくれると考えて、さまざまな物資が直接寄せられています。
被災地で要求される医療の内容も刻々と変化し、外傷を中心とした災害時救急医療から、感染症・慢性疾患の管理・各種の心因反応性症状に対応する等の医療内容に変化しつつあります。今後は、災害直後のような急性期医療活動とは異なる医療のスタイルと、中長期的な医療支援が必要になります。また、全国で「疎開」型の災害地支援も必要になるでしょう。
急性期医療から感染症・慢性疾患・介護までカバーする、幅の広い医療・介護活動の実績のある民医連こそが、今後、全国のそれぞれの地域と結びついた国民的な規模で、しかも継続した医療支援ができる唯一の民間医療介護福祉の組織となるでしょう。
今こそ、共感と連帯と団結の力で、地域の人々と一緒に、近代の日本の歴史では経験したことのない、歴史に残る災害への支援を、長野県民医連の全組織と全職員の力を発揮して進めましょう。

支援に入った場所

坂総合病院

14日
坂総合病院

坂総合病院は電気、水道、トイレ使用可能。隣のクリニックでは5階と7階階段にできたばかりの横ヒビあり。水道関係は使用できず、病院利用。到着後の説明では、第1グループは、支援スタッフの医師・看護師が外来患者対応(事務がトリアージ)、坂総合病院スタッフは、入院患者対応。第2グループが、避難所回り、健康相談から始める。(宮坂)


15日
トリアージタグ
トリアージタグ

坂総合病院は宮城県震災拠点病院になっていて、全ての急患を受け入れ。玄関で患者をトリア-ジ。緑色(軽症ですぐに帰れる人)黄色(要治療の人)赤色(重症、CPA・AMIなど)に振り分けられ、それぞれのブースで対応します。

トリアージ黄色ブース(リハビリ室)
トリアージ黄色ブース(リハビリ室)

14日の夜勤、黄色ブースでは南医師(健和会)、小沢看護師(松本)、中村看護師(長野)と一緒でした。震災直後は水が不足して脱水の方が多い様子。治療が終わっても、避難所まで帰る交通手段がなかったり、帰る所もなかったりで泊まる患者さんが多い。もともとはリハビリ室で45床。医師5~6人。看護師常時15~16人。事務3人で対応。(古池)


泉病院

16日
津波の後
津波の後

水道・ガスが不通なので、日常診療を支えるために病棟業務をサポート。エレベーターが使えないので、食事はリレーで配膳。健和会の看護師2人が帰った後は上田からの看護師が引き継ぎました。医療物資が足りません。吸引器、吸引チューブ、経管栄養のための資材などが欲しいです。(伊壷)


避難所

17日
避難所避難所
避難所
避難所を訪問

坂総合病院から周辺の避難所へ情報収集と健康相談へ。どこに何人程度が避難しているのか、行政や医師会からの健康相談サポートがあったかなどを確認し、対策本部へ情報集中しています。柳沢先生・原田先生(長野)でそれぞれ4〜5か所をまわりました。(窪田)


松本協立病院・福澤医師から

坂総合病院入口でのトリアージや赤ブースで当直と日中の診療を担当した他、4日目には午前午後3か所の避難所訪問をしました。小学校の体育館規模の避難所で200人ほどが避難しています。震災初期と比べ外傷などより亜急性期の内科的な疾患が多くなっていて風邪やインフルエンザも。現地医師の負担があまりにも大きいので、継続した支援が必要だと感じました。

現地からの報告

到着まで

13日朝9時に松本を出発し、鶴岡経由で午後8時塩竈市に到着。「ガソリンの供給が不安定」という情報で、小まめに給油。笹谷インターから通行止めでしたが、救援車両は通してくれました。笹谷インターから先では、所々道がたわんでいるので、走行速度は60㎞くらい。仙台東インター以降は橋が崩落のおそれがあるため、通行止め。インター降りてから、海岸方面では津波の後に折り重なった車の生々しい光景。津波にあった地域は信号機そのものが壊れているようで道は真っ暗。(窪田)

坂総合病院に行く途中にて残された船線路に重なった車
坂総合病院に行く途中にて
残された船
線路に重なった車

地震から7日目

売るガソリンがなく「閉店」を表示したガソリンスタンドでも、50~60人が並んでいる。「緊急車両用のガソリンの販売は可能だが、このような状況では売れない」と、来店の時間を告げられ、一旦病院へ引き返す。(水野)


避難所やその周辺

避難所の連絡ボード坂総合病院に次々と到着する救急車
避難所の連絡ボード
坂総合病院に次々と到着する救急車

19日、病院から車で5分程度のところですが、現地スタッフと訪問に行きました。「報道は何も伝えていない...」情報も食糧もなく、子どもやお年寄り、家族を守るために必死に生きている様子でした。昨日までの院内支援では知ることができなかった現実です。一刻も早く、被災された皆さん全体への支援が必要です。訪問活動が強化出来るように現地スタッフ会議でも提案したいと思います。(宮坂)


支援物資輸送図 被害状況/支援募金/支援隊/医療支援表

【長医協】

柘植賢治専務

全日本民医連からの「薬剤支援要請」に応え、17日現在1800万円相当額の医薬品などを準備しています。「宮城民医連で通常使用している薬剤購入金額の多い上位150品目を支援してほしい」という内容で、関東近県1都6県を中心に医療事業協同組合への要請です。長医協では輸液や高血圧の薬などを担当します。
通常は県外の病院へ薬剤を届けるための購入は出来ないのですが、「震災支援」ということでメーカーの協力も得られました。第1陣(2tトラック1台分)は26日に発送の予定です。

各連絡会の取り組み

飯伊 林憲治本部長代理

震災直後、直ちに理事長の指示で対策本部を立ち上げました。13日には、第1回目の会議を開催。熊谷本部長・林本部長代理を中心に、「東日本大地震被害への支援活動について」により職員に行動提起を行い、物資・支援者・募金を募りました。14日から、人物金が動きだし、かつてない取り組みの規模となっています。支援隊も第3陣まで組織し、4月以降も立候補者が出ています。物資専用の倉庫には、地域や友の会からあつまり、募金は、全職員が日給分を目標に、分割も可ということで毎日集中されています。

19日申し送り19日荷物を積み込んだワゴン
19日申し送り
19日荷物を積み込んだワゴン

中信 三村功対策本部長代理

中信民医連では古畑運営委員長(中信勤医協理事長)を本部長に対策本部を設置し、第1陣を13日(日)朝送り出しました(看護1名、事務3名)。続けて第2陣の県連混成隊(14日出発)に医師1名を派遣しました。今後も医療支援を計画しています(第3陣は22日出発で4名)。また、職員、友の会会員さんから義援金や物資が続々と寄せられています。22日には支援者の院内報告会を行い、駅頭での義援金募金・支援報告の行動を26日に計画しています。

院内報告会
院内報告会

長野 谷口亮一救援対策本部長代行

長野医療生協では理事長を対策本部長に、組合員に向けて募金と救援ボランティア登録の訴えをはじめました。
病院では院長を先頭に拡大管理会議で対策を立て、13日から被災地へ支援の職員を送っています。募金と物資の取り組みも行っています。今後も長期にわたる医療支援に取り組みます。

15日出発便の見送り
15日出発便の見送り

上伊那 野口正泰対策本部事務局長

支援物資や義援金は、利用者さんや一般の方からも対策本部へ続々と寄せられています。
15日に上伊那生協病院と老健はびろの里の2会場で「東日本大震災支援を考える緊急集会」が開かれました。阪神淡路大震災で被災した職員や支援に行った職員が体験談や思いを語りました。また、病院会計窓口横に寄せ書きコーナーを設置。21日出発の支援隊はみんなの思いと一緒に、自転車など物資を届けました。

寄せ書きコーナー
寄せ書きコーナー

諏訪 清水晃対策本部長

14日、看護師、理学療法士各1名が出発し、約10時間かけて坂総合病院に着きました。出発の様子は地元の長野日報と市民新聞に掲載されました。22日に第2陣2名が出発しました。
22日午後、諏訪共立病院で記者会見を開き、支援の輪を広げることを訴えました。現地支援に入った職員から「原発が心配」との声が聞かれています。政府に対し安全の為にしっかり対応するよう求めた。

22日の記者会見
22日の記者会見

東信 中沢祐一対策本部長代行

第1陣の医療支援は17~20日看護師3名を派遣。第2陣の医療支援は28日に出発予定。「次は参加したい」と職員から申し出も。
18日発行の東信医療生協機関紙「千曲の虹」と一緒に配布できるよう、「救援募金・救援物資のお願い」の文書を用意しました。1万4000名の組合員さんにも協力を呼びかけます。

医療支援者を激励
医療支援者を激励

医療・福祉、暮らしの4年間をきめる"統一地方選挙"迫る!

~生活密着・県議会の役割~ 4月10日投票県会議員選挙

今年は4年に一度の統一地方選挙の年。長野県議会議員選挙は、4月1日告示、4月10日投票で行われます。県議会は、県民の希望や意見を聞き、「県の仕事内容」と、それに必要な「予算」を決めます。そして、仕事をすすめるための「条例」を定めるところです。 選挙では、26の選挙区から58人の県会議員を選びます。その顔ぶれによって私たちの4年間の暮らしが左右されるといっても過言ではありません。県議会の仕事と私たちの暮らしはどう関わっているのでしょうか。

県議会の仕組み図

8464億2000万円余の使い道を決める「本会議」

2月の定例県議会で長野県の2011年度予算は、8464億2000万円余と決まりました。この税金の使い道を決めるのが58人の議員です。
その中には、4月から実施される【中学1年生の30人規模学級】もあります。これは、中学1年の学習や生活の変化になじめず不登校などが急増する「中1ギャップ」現象をきめ細かくフォローしようというもので、父母や教職員の粘り強い運動が実ったものです。今後の全学年への広がりが期待されています。
また、介護分野では【137か所の介護施設の建設】、防災分野では【浅川下流域の内水災害対策】などが計上されています。
しかし、残念ながら浅川ダム建設費20億円に代表されるような、ムダ使いも多く指摘されます。

県議会が決めなければ国の施策も"絵に描いた餅"

国が実施を決めても、県議会が議決しなければ市町村に助成することはできません。最近では【子宮頚がんワクチンの助成】が県議会で議決されて実現しました。
【生活保護費】についても、市の場合は、国が3/4、市が1/4負担しますが、町村には、県が1/4を負担しています。
このように、どの議員がどういう対応をするのかが県民生活に大きく関わります。

浅川ダムにかける200億円があれば......

阿部知事が強行している浅川ダム建設には、今後200億円が投入される計画です。その200億円があれば、

● 格差なく子どもの受療権を守り、子育てを支援するための【乳幼児医療費の窓口無料化と事務手数料の無料化の実施】
● 保険料滞納世帯17%、県内でも9人の死亡が報告される、高すぎる国保料を軽減するための【国保会計への県費投入】
● 秋田県で21億6千万円の予算で地元に512億円の経済効果を生み出した【住宅リフォーム助成制度の実施】

講演する朴さん

などの県民生活密着の施策を、簡単に実施することができます。
どういう長野県にするか、私たちの1票で決まります。

県会議員選挙、私の1票はこれに!

子どもの医療費、窓口無料化

さかき生協診療所・斉藤

09年に福祉医療の手数料が、1レセプト当たり300円から500円に値上げされました。この村井前知事の提案に賛成した県議には、決して投票しません。全国ではすでに34都府県が実施している窓口無料化。中学卒業までの無料化を通院も含めてぜひ実現していただきたい。私の1票は、そこを基準に投じます。

安心して老後を暮らせる長野県

上伊那生協病院・高橋

利用者様の多くが、将来の不安を口にしたり、今の状況を嘆いて「早くお迎えが来ないかなぁ」と言われます。自分が年をとった時にそんな気持ちにはなりたくありません。施設の整備や在宅サービスの充実に取り組んでいただきたいです。
2012年には介護保険制度の改訂がありますが、その内容に上乗せしてでも「安心して老後を暮らせる長野県」を目指してほしいです。

未来ある学生にあたたかい県政

長野中央病院・佐久間

先日、しばらく音信がなかった大学の後輩が、「家計が苦しく、親からは節約してくれといわれた。年末年始は所持金数百円で、気持ちが落ち込み、何をする気にもならなかった」と打ち明けてくれました。
日本の学費は世界一高い!学生生活はとにかくお金がかかるんです。家賃補助や独自奨学金創設など、学生を支える県政を実現したい!

介護サービスの充実に

在宅支援センター協立こすもす 横沢

介護保険開始から在宅サービスに関わる仕事をしてきました。10年前には,仕事を辞めて介護に専念することもできていましたが、今は経済的に大変になっています。介護サービスを利用している方の中にも、家族が解雇され仕事が見つからないため自分の年金を生活にあててもらおうと、サービスの利用を控えている方もいます。子どもから人生の先輩まで希望が持てる社会にしてほしいです。

「買い物弱者」を助けて!

健和会病院・土井

飯田下伊那地域(とりわけ山間地域や飯田旧市地区)では、バス会社の不採算路線からの撤退、そして大型店への顧客集中による身近な店舗の相次ぐ閉鎖によって「買い物弱者」といわれる人が多数生じています。
そこでこうした人々のために、2 00円程度の少額なら有料でもいいので、いろんなお店をまわる巡回バスを出してほしいです。あるいは、宅配サービスなら独居老人の安否確認もできます。ぜひ実現を願います。

介護の施策の充実!

諏訪共立病院・上田

高齢者の医療問題や介護保険制度が、私自身にとって身近なこととなっています。88歳の父は、昨年6月に3度目の脳手術の後ほぼ寝たきりの状態となり、8月から胃ろうでの栄養補給となりました。在宅に移行という話があり、世話をする87歳の母が吸痰などに大きな不安を訴えていました。今は何とか4か所目の病院でお世話になっていますが、希望するリハビリはほとんど削られ今後どうなるか?在宅になれば誰が介護するのか?
必要な方に必要な医療や介護が行われることは、基本的な人権の問題です。しかし3か月たつと病院をでることを余儀なくされ、介護では、認定の問題や利用料がのしかかり、さらに改悪されようとしています。
病院にいる患者さんや介護保険の利用者さんは、もっともっと深刻な方ばかりです。医療従事者として、病気になっても介護が必要になっても安心して暮らせるように、県や市町村の施策をすすめてほしい。今度の選挙ではこんな候補者に1票を託したいと思います。

県会議員選挙、私の1票はこれに!

中央が山宣の碑

私は沖縄へ行くのは今回で2回目です。1回目は修学旅行で沖縄の良いところばかりを観光してきましたが、今回は、本当の沖縄というか現状を、目で見て、耳で聞いて、心で感じることができました。
66年前は唯一の地上戦として多くの沖縄住民が苦しみました。現在は米軍基地との共存で騒音や誘拐、ヘリの墜落など多くの危険を抱え苦しめられています。戦争に負けたからといって、日本政府はアメリカの言うことを「ハイハイ」と受け入れていいわけではありません。
私ができることは沖縄の現状を多くの方たちに伝え、辺野古への基地移設中止、高江へのヘリパット建設の中止を訴えることです。皆さんも沖縄の現状を知り、キレイな海、美しい島を守ってください。

上伊那生協病院・大槻 真唯

社会保障の第一義的任務は「貧困の除去」にある ー県連学運交での記念講演からー

2月19日(土)、松本大学で開催された第13回学術運動交流集会で、唐鎌直義氏(元専修大学教授)の「日本の貧困問題と社会保障制度について」と題した記念講演が行われました。講演はホームレス調査や日本の社会保障の歴史・諸外国の社会保障制度との比較など、多岐にわたる内容でした。おもにイギリスとの比較部分を紹介します。

ホームレスは「タマちゃん」以下!?

―「貧困」の個人的原因説―
第13回学術運動交流集会での唐鎌直義氏

07年、台風で増水した多摩川。中州に取り残されたホームレス23人がヘリコプターで救助されるニュースが放映されました。翌日、TV局には2000件の抗議が寄せられました。「ホームレスの救済は税金の無駄遣い」「勝手に河原に住んだのだから災害にあうのも自己責任」というのです。野宿者は多摩川に迷い込んだアザラシのタマちゃん以下なのでしょうか? 失業、病気、離婚など誰でもちょっとしたきっかけでホームレスになる可能性がありますが、貧困に陥った原因をその個人に求める「貧困の個人原因説」が信じられています。それは明治政府の『恤救(じゅっきゅう)規則』の時代から、「少しでも働けるうちは自分で何とかするもの」「お上の世話になるのは恥ずかしいこと」といった社会風潮があるからです。

『ハリー・ポッター』を生んだ公的扶助

―人的投資としての福祉は後に社会に還元される―

『ハリー・ポッター』の著者、J・K・ローリングさんは、離婚後子どもを連れて故郷の英国エジンバラに帰ってきました。公的扶助(インカム・サポート)をうけながら、行きつけの喫茶店のお気に入りの席で毎日執筆を続けました。日本なら「若いのに働かないで、毎日、喫茶店になんかに通って」と非難されたでしょう。後に、彼女は女性高額所得者の世界2位に。彼女の納税額は給付された扶助費の何十万倍、何百万倍にもなり、印刷関連業界や映画業業界への経済効果もはかりしれません。
イギリスでは公的扶助が1966年に法改正されました。手続きを簡素化し、郵便局に備え付けのハガキに必要事項を記入し投函すると、担当者から訪問調査日時の連絡がくる仕組みになりました。BBC放送を使い政府自らが積極的に広報しました。
2003年まで公的扶助は3種類(①インカム・サポート②ワーキング・ファミリーズ・タックス・クレジット③ジョブシーカーズ・アローワンス)でしたが、受け取る層に応じて細分化されてきています。4世帯に1世帯、5人に1人が受給者です。イギリス人にとって、公的扶助を受けることは「人生の通過点に過ぎない」という認識にかわり、公的扶助に対するスティグマ(恥辱感)がなくなりました。

社会保障の第1義的任務は貧困の除去にある

日本に「社会保障は貧困の除去のためにある」という考え方の基本を定着させ、それに見合う制度整備が必要です。今、菅首相は「税と社会保障の一体改革」と言って、消費税増税をたくらんでいます。消費税増税は「貧困の除去」に逆行するものですから、社会保障がよくなるわけがありません。

*① インカム・サポート:最低生活費保障、16時間未満働く人を対象、無期限
*② ワーキング・ファミリーズ・タックス・クレジット:16時間以上働く人を対象、1人親世帯が中心
*③ ジョブシーカーズ・アローワンス:求職者手当、長期失業者を対象

表1) 国民1人当り社会支出の国際比較(2005年)
表1) 国民1人当り社会支出の国際比較(2005年)

日本はアメリカに次いで国民所得が高く、国は豊かですが、社会保障支出比率が低いことがわかります。*社会支出率=OECD基準による社会支出【分子】/ 国民所得【分母】


 注) 社会支出率とは「OECD基準による社会支出」の対国民所得比のことを意味する。
 資料)『 社会保障統計年報』(平成20年版、法研、2009年刊)p.125、577、578より作成。
表2) 政策分野別にみた社会支出の構成比の国際比較(2005年)
表2) 政策分野別にみた社会支出の構成比の国際比較(2005年)

日本では高齢者(年金・介護)と保健(医療)で約8割を占めています。失業・積極的労働政策(雇用創出の施策)や障害・家族(児童手当)・住宅分野など、貧困との関連性の高い分野が低いことがわかります。


 資料)『社会保障統計年報』(平成20年版、法研、2009年刊)p.127より作成。

第14回長野県民医連共同組織活動交流集会に305人

第14回長野県民医連共同組織活動交流集会

3月12日(土)、「守ろう命と健康、平和と暮らし、今こそ国民が主人公の国づくりを!」をメインテーマに長野大学でひらかれました。午前は矢島嶺医師の記念講演、午後は6分科会に分かれ交流を深めました。また、会場から15万6000円の震災救援募金が寄せられました。


参加者の声 中信健康友の会副会長・佐原 佐登司

講演する矢島嶺医師
講演する矢嶋嶺医師

活動交流集会は、未曾有の大震災の翌日、上田市で開かれました。地元上小地区のみなさんの諸準備や運営面でのご尽力に深謝する一日でした。
矢嶋先生の記念講演「健康に生きて、満足に死ぬ」は、先生独特のユーモアたっぷりの話芸ともいうべきお話でした。たとえば、「メタボ健診」は医療産業のために学者がつくりだしたもの―。「自分で治る病気が8割、医者が治す病気は約1割、医者にかからない者ほど長生きする」等、社会風刺を利かせたお話や、持論の「満足死」についての講演は、多くの参加者が納得したことと思います。
午後、私は「動く分科会」に参加しました。「山本宣治(山宣)」の追悼碑見学と詳しい解説を、講師の山極悦男さん(山宣会事務局長)よりお聞きしました。さらに柏屋旅館に移動し、現主人の斉藤三男さんより上小農民組合とタカクラ・テルそして山宣との結びつき、山宣追悼碑を警察が破棄せよとの命令にも屈せず、父の斉藤房雄さんが夜間、自宅の庭石の一部として埋めて守った話などもお話しいただきました。
「山宣ひとり孤塁を守る」と述べた当時の厳しい歴史とそれを支えた人びとを偲ぶことができた研修でした。感謝。

貧困をなくし、雇用とくらし・いのちを守る2.27県民集会ひらかれる

2.27県民集会

2月27日、長野県民医連など22団体で構成する国民大運動長野県実行委員会が、長野市のJAアクティーホールで集会をひらき、650人が参加しました。
民医連は、「2010年国保死亡事例調査」を報告。県内では9件あり、4件が長野中央病院です。59歳男性(独居・無保険)は、糖尿病の治療を中断したため車内で意識不明となり救急搬送されました。神経障害と壊疽で両足切断、一時は意識を回復しましたが、敗血症で死亡しました。携帯電話の中の連絡先は3件。退職後の健康保険加入の手続き方法や定期預金の解約方法もわからなかったといいます。
報告した長野中央病院の笠原優さんは、「治療を継続していたら、まわりに相談できる人がいたら...と考えると、『無縁社会』の典型です。誰もが安心して医療を受けられる社会にしましょう」と、訴えました。
集会には信州大学教職員組合の西正明副執行委員長が連帯のあいさつ、JA長野中央会からもメッセージが寄せられ、協同の広がりを感じました。軽トラ18台が先導したデモ行進では、「TPP参加をやめさせよう」など元気よくアピール、政治を変えれば、今の状況を必ず打開できると確信しました。
(長野医療生協・石川 徹)



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